【2025年版】経済損失は15兆円!?データで読み解く「睡眠の質」改善市場と将来性

日本は世界でも深刻な睡眠不足国であり「睡眠負債大国」と呼ばれています。
近年、この課題を背景に「スリープテック」を中心に睡眠市場は急拡大しており、食品から企業の福利厚生まで、睡眠改善への関心はますます高まっています。一方、情報が溢れる中で、消費者は「何を信じれば良いのか」と戸惑っています。
本コラムでは、日本の睡眠課題の現状と市場動向を紐解きながら、 これからの睡眠ビジネスに不可欠な「信頼性」の重要性について考察します。
成長を続ける睡眠市場と消費者インサイト
睡眠不足による日本の経済損失は年間15兆円(2016年米国シンクタンク調査)に上るとされ、「睡眠負債大国」と言われています。睡眠不足は、心身の健康リスクといった個人的な問題を超えて、社会全体で取り組むべき課題であると言えます。
日本人の睡眠課題が深刻化する一方で、その解決を目指す「睡眠市場」は目覚ましい成長を遂げています。寝具や改善薬を含む日本の睡眠関連既存市場は1.2兆円にも上ると言われ、そのポテンシャルは計り知れません。
“スリープテック”が市場を牽引
近年、睡眠市場で特に注目を集めているのが、「スリープテック」と呼ばれる分野です。ITやAI技術を活用し、睡眠状態を可視化・分析して改善を促す製品やサービスを指します。株式会社矢野経済研究所の調査(※1)によると、国内のスリープテック市場(サービス利用料・アプリ使用料ベース)は、2022年の60億円から2023年には95億円へと急拡大しました。さらに2027年には160億円に達すると予測されており、その勢いは留まることを知りません。
※1 出典:株式会社矢野経済研究所 スリープテック市場に関する調査(2024年)

食品分野においても睡眠は大きなキーワードです。株式会社インテージの調査によると、睡眠関連の機能性表示食品市場は、2022年度に前年比190%となる735億円に達しました。(※2)
具体的には、GABA(ガンマ-アミノ酪酸)が配合されたチョコレート菓子、乳酸菌含有の飲料やサプリメントなどがその例です。この市場規模は、美容・健康ドリンク(733億円)、インスタントコーヒー(750億円)といった人気カテゴリーと同規模です。これは、消費者の「手軽に睡眠の質を改善したい」という強いニーズの表れと言えるでしょう。
※2 出典:株式会社インテージ 「知るギャラリー」2024年5月14日公開記事
さらには、従業員の健康を経営資源と捉え、戦略的に投資する「健康経営」への関心の高まりも市場拡大を後押ししています。睡眠不足は、集中力低下による生産性の損失(プレゼンティーイズム)やメンタルヘルスの不調に直結するため、企業にとって看過できない課題です。そのため、専門家による睡眠セミナーの開催や法人向けの睡眠改善アプリの導入、睡眠に関する相談窓口の設置といったサービスを福利厚生として提供する企業が増加しています。
睡眠市場は、もはやニッチではなく、あらゆる企業にとって無視できない巨大なビジネスチャンスとなっています。

睡眠ビジネスの成功の鍵は“高い信頼性”
厚生労働省は2024年2月に「健康づくりのための睡眠ガイド2023」(※3)を発表しました。「適正な睡眠時間の確保」と「睡眠休養感の向上」が、すべての国民が取り組むべき重要課題であるとして、睡眠障害への早期対応や医療機関への相談を推奨しています。
※3 厚生労働省「健康づくりのための睡眠ガイド2023」
実際に弊社が2025年に医師向けに実施した調査(※4)では、睡眠に関する相談を受けたことがある医師は全体の約75%と回答がありました。
※4 出典:エムスリー株式会社 m3.com医師会員を対象に「睡眠障害」に関する調査を実施(2025年5月)
Q:睡眠に関する診療や相談を受けた経験はありますか。(n=1,465人)

睡眠課題は、個々人で症状も様々であり、その原因も解決策も多岐にわたると言えます。
だからこそ、消費者は氾濫する情報や商品の中から「何を信じれば良いのか」という切実な問いを抱えています。 特に健康に関わる睡眠分野では、専門家である医師の知見に基づく「信頼性」が不可欠です。