【ヘルスケア】マーケティングの基本ー4つの要点と施策4選

健康意識の高まりとともに、ますます注目を集めるヘルスケア市場。本コラムでは、ヘルスケア商品のマーケティング戦略における基本を徹底解説します。”消費者の信頼を得るための4つのポイント”と、”具体的な販促アイデア4選”をまとめました。
効果的なマーケティング施策を立案し、事業成長に繋げるためにぜひお役立てください。

ヘルスケア市場の現状と将来予測

ヘルスケア市場は、世界的に目覚ましい成長を遂げています。米国のリサーチ会社であるSkyQuest社の調査によると、世界の消費者ヘルスケア市場規模は2023年に、453兆5400億円※ に達しており、年平均成長率7.60%という高い成長率で、2032年には876兆8400億円※ にまで拡大すると予測されています。

日本国内でも、高齢化社会の進展や健康意識の高まりを背景に、メディカルケア(医療機関での治療)からセルフヘルスケア(自分自身による健康ケア)へのシフトが予測されています。富士経済社の調査では、セルフヘルスケアの国内市場は2024年時点で7兆1,190億円と見込まれており、2030年には7兆4,944億円と推定されています(24年比105.3%)。

※消費者ヘルスケア市場は、処方薬や病院での治療を含まない一般消費者向けの商品市場を指す
1ドル=150円で計算

ヘルスケア市場は多様な業界からの参入が相次いでおり、健康食品やフィットネスサービスに加え、メンタルヘルスケア、リカバリーウェア、ウェアラブルデバイス、IoT家電など、人々の生活を支える様々な分野への広がりを見せています。

“健康寿命”の概念が浸透し、「いつまでも生きたい」と考える人よりも「いつまでも健康でいたい」と考える人が多い※なか、ヘルスケア商品のニーズは今後さらに高まっていくことが予想されます。

株式会社NTTデータ経営研究所調べ。

ヘルスケア商品のマーケティングにおける4つのポイント

①消費者心理の理解

消費者がヘルスケア商品を購入する際、「信頼性」を非常に重視していることが分かりました。

ヘルスケア商品を購入する際の決め手を質問した調査では、「信頼できる企業が製造・販売している」「試験結果など根拠のあるデータが確認できている」「85%の医師が勧めている」といった商品が、「他と比べて値段が安い」「テレビや雑誌などで良く広告を見る」商品に比べて購入意向が高いという結果となりました。

この調査から、消費者が企業名やデータ、健康のプロである医師の意見などを参考に、信頼できる商品を購入している様子が見えてきます。

調査の詳細な結果は、こちらのレポート(無料)からご確認いただけます。

②ターゲットの明確化

一般的なマーケティング戦略でSTP(セグメンテーション、ターゲティング、ポジショニング)が重視されるのと同様に、ヘルスケア商品のマーケティングにおいてもSTPは重要です。市場を細分化し、自社にとって魅力的なターゲット層を選定し、その層に響く独自の価値を打ち出すことが、成功の鍵を握ります。

しかし、ヘルスケア市場特有の事情も考慮する必要があります。健康というデリケートな領域を扱うため、信頼性と安全性が特に重視されます。また、ターゲット層においても、高齢者、妊婦、特定の疾患を持つ人々など、様々なセグメントが存在します。

そこで重要となるのが、ターゲット層のより詳細な分析です。一般的な年齢や性別などの属性情報に加え、健康状態、ライフスタイル、価値観、購買行動などを深く理解する必要があります。例えば、同じ「高齢者」というターゲット層でも、アクティブな高齢者と介護が必要な高齢者では、ニーズや求める商品・サービスが大きく異なります。

さらに、ヘルスケア商品のマーケティングでは、診療科などの専門領域でターゲティングできる点が特徴的です。例えば、糖尿病患者向け、高血圧患者向け、アレルギー疾患を持つ人向けなど、特定の疾患や症状を持つ人々をターゲットにすることができます。これにより、より専門性の高い商品・サービスを提供し、ターゲット層のニーズにピンポイントで応えることが可能となります。

③パーソナライズされた顧客接点

ターゲットを明確にした後は、顧客一人ひとりのニーズや状況に合わせて、最新情報やサービスを提供することが重要となります。なぜならば、個々の健康状態やニーズは大きく異なるため、画一的な広告では響きにくいためです。パーソナライズされた広告は、ユーザーの関心や課題に合わせた情報を提供し、より高い関心と購買意欲を喚起します。

ヘルスケア商品においては、ターゲット層が利用する病院・クリニックの診療科や、ターゲット層が受け取った医薬品に合わせて、広告を打つことができます。例えば「糖尿病患者さん向けの食品」を宣伝したい場合、後述する薬機法の観点から「糖尿病患者様向け」と訴求することはできません。そのため、広告文句でパーソナライズするのではなく、糖尿病患者さんが多い内科でのCM放映やサンプリングなどが有効な手段として考えられます。また、場合によっては「血糖値を下げる薬が処方された方」に商品案内をお送りすることも手段の1つとして考えられます。

ターゲットごとに接点をパーソナライズすることによって、以下のような効果が期待できます。

  • マーケティング施策の効率化:ターゲット層に合わせた最適なチャネル、メッセージ、クリエイティブを選択できる
  • 顧客満足度の向上:ターゲット層のニーズに合った商品・サービスを提供できる
  • 費用対効果の向上:ターゲット層以外への無駄なアプローチを削減できる

④正確な情報の提供

ヘルスケア商品のマーケティングにおいて、最も重要な要素の一つが、正確な情報の提供です。消費者は、自身の健康に関わる商品に対して、安全性や有効性に関する正確な情報を求めています。誇張した表現や誤解を招くような情報は、消費者の信頼を失うだけでなく、法的な問題を引き起こす可能性もあります。

特に、ヘルスケア商品の広告や表示に関しては、「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」(薬機法)や「不当景品類及び不当表示防止法」(景表法)など、様々な法規制が存在します。

例えば「△△が治る」といった表現は、医薬品的な効果・効能をほのめかしており、薬機法の対象として禁止されています。また景表法では、客観的な根拠がないにもかかわらず、実際よりも著しく優良であると誤認させる表示(優良誤認表示)や、有利であると誤認させる表示(有利誤認表示)等は禁止されています。

広告規制の対象や、具体的なNG表現・OK表現など詳しい情報は、以下のレポート(無料)からご確認いただけます。
食品はこちら / 日用品はこちら

ヘルスケア商品のマーケティング担当者は、これらの法規制を十分に理解し、遵守することが求められます。信頼性の高い情報を提供することは、企業のイメージ向上にも繋がり、長期的な顧客関係構築に不可欠です。

信頼を獲得するための販促アイデア4選

自社商品のターゲット層に効果的にアプローチして、信頼を築くための具体的なマーケティング施策アイデアを5つご紹介します。

①医師の推奨マーク

医師の推奨マークは、健康のプロである医師がその商品を評価し、推奨していることを示すものです。消費者は、医師から高評価を得ている商品に対して安心感を抱きます。

  • ターゲット:健康に興味関心のある方から、健康軸で探していない人も含め幅広く
  • 接点:商品パッケージや広告、ウェブサイトなど
  • 特徴:パッケージ内で「多数の医師が勧めていること」がパッと見て分かるため、店頭やECサイト上で差別化しやすい

②病院やクリニックでのサイネージ広告

病院やクリニックは、健康に関心が高い人々が集まる場所です。待合室にあるサイネージ広告を掲載することで、ターゲット層に効果的にアプローチできます。

  • ターゲット:病院を訪れる方々(特定の疾病のある方、お子さまのいる保護者、高齢者など)
  • 接点:クリニックの待合室
  • 特徴:待ち時間に放映するため視聴率が高く、長尺の動画で商品の詳細を伝えることが可能

③病院やクリニックでのサンプル配布

実際に商品を試してもらうことで、消費者の理解と信頼を深めることができます。病院やクリニックでサンプルを配布することで、医師や看護師からの説明も加わり、より効果的な販促が期待できます。

  • ターゲット:病院・クリニックの受診者
  • 接点:病院、クリニック(医師や看護師から直接手渡したり、待合室に設置したりする)
  • 特徴:一般的なサンプリングに比べて機能性が伝わりやすく、購入意向の引き上げが期待できる(サンプルを受け取った方の55%が、その後実際に商品を購入した経験あり n=1,641 ※当社調べ)

④処方や健康悩みに基づいたセグメント配信

顧客がどのような症状に悩んでいるのかという情報をもとに商品の案内を流すことで、効率的かつ効果的なアプローチが可能です。

  • ターゲット:クリニックの利用者、医師相談サービス※の利用者
  • 接点:メールマガジンやアプリ
  • 特徴:個々人の処方や健康悩みによるターゲティングが可能

※「病院に行くべきか分からない」「セカンドオピニオンが知りたい」といった場合に、オンラインで医師に相談ができるサービス(アスクドクターズなど)

番外編 ~商品開発段階~

ヘルスケア商品の開発段階で、消費者の信頼を獲得するための施策もご紹介します。

医師の知見を取り入れた商品開発

企画段階から医師のアイディアやアンケート結果を取り入れることで、商品への信頼性を高め、消費者に安心感を与えることができます。日々患者さんと接している医師の意見を踏まえることで、専門的な知識や経験が加わり、商品の良さが裏付けられ、説得力のある情報発信が可能となります。

  • ターゲット:健康意識の高い層
  • 接点:商品パッケージや広告、ウェブサイトなど(広告表現には慎重な判断が必要) 
  • 特徴:医師の専門性と権威性が、商品の信頼性を高め、他社商品との差別化に繋がる

エビデンスの取得

商品の効果や安全性に関する科学的な根拠(エビデンス)を示すことは、消費者の信頼を得る上で非常に重要です。しかしエビデンスを広告に利用する際には、薬機法や景表法に十分に気をつける必要があります。

  • ターゲット:ヘルスケア商品に興味を持ち、比較検討中の消費者
  • 接点:商品によるため要確認(薬機法や景表法上、問題ないか慎重な判断が必要)
  • 特徴:科学的根拠を示すことで、信頼性の高い商品であることをアピールでき、医師推奨マークの取得の際にも提示できる

これらの販促アイデアを組み合わせることで、より効果的に消費者の信頼を獲得し、ヘルスケア商品の販売促進につなげることができます。

まとめ

ヘルスケアビジネスは世界的に成長しており、日本国内でもさらなる拡大が見込まれています。マーケティングにおいては、ターゲットを明確にし、正確な情報提供によって消費者の信頼を獲得することが重要です。パーソナライズされた顧客接点を持つことで、より効果的なアプローチが可能になり、消費者の購買行動に繋げられます。

医師の監修やエビデンスの取得、推奨マークの活用、病院やクリニックでの広告・サンプル配布など、信頼を獲得するための具体的な施策を組み合わせることで、ヘルスケア商品の販売促進につなげることができます。これらの施策を自社で内製することが難しい場合、専門のサービス支援会社に頼るのが効率的です。

AskDoctors総研では、本コラムでご紹介したすべての販促施策を一貫してご提供しています。ヘルスケアマーケティングでお困りの際は、ぜひお気軽にお問い合わせください。

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